【獣医師監修記事】消化器系の症状について
2023年02月17日
健康・病気ブタさんが起こしやすい症状として「消化器系」の症状があります。
今回は消化器系の症状とおうちでできる対処法についてのお話です。
ブタさんが不調のときには基本的に病院の受診をお勧めしているのですが、現状、ブタさんを診ていただける動物病院も少ないため、おうちでの応急的な内容もご紹介いたします。
人間にも通じるところがありますので、覚えておくと日常生活にも役立つのかと思いますので、
是非参考にしてみてください^^
消化器系の症状とは?
消化器系とは食物を摂取・分解・吸収・排泄を行う器官のことで、口腔→のど→食道→胃→小腸→大腸→肛門までを指します。
この内臓のどこかに異変が起きると消化器系の症状が現れます。
ブタさんに起こりやすい消化器系の症状として代表的なものは、「嘔吐」、「下痢」、「便秘」です。
これらの症状が起きているときの身体はどういった状況なのか、必要な対策はどんなものか、この3つの症状についてそれぞれ見ていきましょう。
嘔吐について
嘔吐とは?
嘔吐とは胃の内容物が口から強く吐き出される症状のことです。
『様々な要因』によって延髄にある嘔吐中枢が刺激を受けると“嘔吐をしなさい”という指令が出ます。それにより持続的な腹部の筋収縮がおこり胃が圧迫されることで胃の内容物が吐き出されます。
嘔吐中枢を刺激する『様々な要因』は以下のようなもので多岐にわたります。
食事の突然の変更、食事を速く食べること、過食、異物の摂取・閉塞、食物アレルギー、毒物の摂取、内臓系の疾患、寄生虫、胃炎、腸炎、重度の便秘、心因性、車酔い、など
自宅で嘔吐を発見した場合、その前になにをしていたかを思い出して原因を考えてみてください。思い当たることがあればそれが原因で嘔吐をしているかもしれないので、改善する必要があります。
ブタさんの嘔吐でご相談いただく場合、食事関連が多いです。
例えば、食事直後の嘔吐であれば、
「急いで食べていたかも…?」→ゆっくり食べられるように容器の形状や量を工夫する。
「いつもと違うものを食べたからかな…。」→初めて食べるものは少量から様子を見つつ与える。
「一度に食べるには量が多かったかな…。」→がっついてしまう場合は食事を複数回に分けてみる。
このようにブタさんの気持ちになって対策を講じてみてください。
おうちでできる対処法は?
嘔吐による身体への影響は、体液・電解質の喪失、体力の消耗が主です。
嘔吐により胃の内容物、胃酸、水分が身体から失われます。一回の嘔吐であればそこまでではありませんが、頻回の嘔吐になると脱水や体力消耗が心配です。
お家で嘔吐を見かけた場合、まずブタさんの様子を確認してください。
ブタさんが吐いた後もケロッとしている場合は、水分は必ず摂れるようにして様子を見てあげましょう。水分は水道水や、OS-1などの経口補水液を2倍くらい薄めたものでも大丈夫です。
嘔吐後は胃が疲れているので、胃を休ませる意味でもすぐにフードは与えず水分のみの摂取にしましょう。嘔吐したことで栄養が心配になりすぐにフードを与えてしまうオーナー様もいるのですが、さらなる嘔吐を引き起こす可能性もあるので、一旦ブタさんを落ち着かせ様子を見るようにしてください。次のごはん時も1/4量くらいから様子をみて与えるようにしてください。
一方、嘔吐後ぐったりしている・何度も何度も吐く場合は、様子を見てはいけません。消化管閉塞や他の疾患の可能性もあり、脱水や体力消耗も顕著になるのですぐに動物病院を受診するようにしてください。受診できるまでの時間も水分は摂れるようにしてあげましょう。
下痢について
下痢とは?
下痢とは、糞便が液状または液状に近い柔らかい状態で排泄されることをいいます。一般的に排便回数が正常時より増える傾向にあります。下痢の時は胃より下部の小腸・大腸で異変が起きており、異変の場所により小腸性下痢と大腸性下痢の2種類に分けることができます。
小腸性下痢と大腸性下痢はどう違うの?
2つの下痢のタイプの特徴を以下にまとめました。
通常、食べ物は胃で消化され、小腸で栄養と水分を、大腸で残った水分が吸収され、最終的に便として排出されます。
小腸に異変があると、栄養・水分が吸収できず、吸収できなかった分が便として出てくるため便量が多くなります。きばるとすぐに出て、バシャーと大量に出るのが特徴です。一方、大腸に異変があると、水分は吸収されないので緩い便にはなりますが、栄養と大部分の水分は小腸で吸収できているため便量としては増えません。何度も何度もトイレに行き、きばるが少量しか出ずポタポタしているのが特徴です。また白い膜のようなものが付いた粘膜便も大腸の調子が悪い時に出ることがあります。
どちらの緊急性が高いかというと、小腸性の下痢のほうです。
いくら食べても栄養が吸収できないので体重が減少してきます。また脱水もこちらのほうが顕著です。
おうちでできる対処法は?
いずれの下痢においても身体から水分が失われていることは同じなので、嘔吐の時と同じですが、水分をしっかりとれるようにしましょう。脱水になると循環器系やほかの内臓にも影響が出てしまうので水分補給を第一に行ってください。大腸性の下痢のほうは水分補給を行い、市販の整腸剤を少しごはんに混ぜることで治癒することもあります。しかし、回復が見られない場合は病院を受診して下さい。
一方、小腸性の下痢のほうは、消耗が早く栄養や水分がどんどん身体から出て行ってしまうので、なるべくすぐに動物病院を受診するようにしてください。何度もトイレに行くことはなくケロッとしているのですが、こちらのほうが状態として悪く、次第にやせて毛の艶も悪くなっていくので注意が必要です。
便秘について
理想的なブタさんのうんちは?
まず、ブタさんの正常なうんちはどんな様子か確認しましょう。下記の画像の様にひと塊のバナナ状の便が良いうんちと言われています。持ち上げても地面に便は付かず、指でつぶすと少し柔らかいものが良いです。
一方、ポロポロ落ちるようなコロコロうんちは便秘気味と言えます。つぶすのにも少し力が必要です。ブタさんは水を飲まない子も結構いてそういう子たちのうんちはコロコロしている印象です。定期的にブタさんのうんちを袋越しに触ってみて硬さを確認してみましょう。
便秘とは?
便秘とは、腸の動きが不十分な状態のことをいいます。
腸の動きが悪いと…
① 糞便が腸内に滞留している時間が長くなる
② 水分が腸へどんどん吸収され糞便が固くなる
③ 固くなった糞便は中々動かず滞留する→①へ戻る
といったように悪循環に陥ります。便秘がひどくなると、排便姿勢をとってきばっていてもポロッと一粒転がる程度になってしまいます。
ブタさんが便秘になりやすい原因としては、水分摂取不足、運動不足が一番多いです。
特に冬は寒いので運動量が減りさらに飲水量も減るため、便が硬くなっているブタさんが多い印象です。また運動不足だと、腸の動きも限定的になって便が停滞しやすいです。
おうちでできる対処法は?
便秘の原因は上記の様に、運動不足、飲水量不足が多いです。
おうちでブタさんの便の形や硬さを確認してみてください。
ポロポロのうんちで固い場合少し飲水量が減ったりするとさらに便秘になるので対策をしましょう。
例えばフードを中に入れて遊べるようなおもちゃなどを使って運動をしてもらってください。腸への良い刺激を増やし排便を促進し、運動により水を飲む量が増えて便の水分量の増加を促す。このような良いサイクルを目指すようにしましょう。
またお腹のマッサージも有効であることがあります。スキンシップをかねてお腹を優しくマッサージしてあげることで排便を促しましょう。お腹の上のほうだと胃をマッサージしてしまうので、おへそより下の範囲を優しくおしりの方向へ撫でてください。
まとめ
今回は消化器系の症状についてまとめました。
ここまででお気づきになった方もいらっしゃるかもしれませんが、消化器系の疾患への予防や対処を含めて共通して登場してきているモノがあります。
それは、『水分』です。
他の動物もですが、ブタさんは特に水分が大事な動物です。
身体に水分がたっぷりあることであのボディが保たれています。
嘔吐、下痢の場合は水分が出ていき、身体を動かすための水分が足りない状況なので、まず水分補給が重要になります。便秘の場合は日々の水分摂取量が少なく身体の水分が足りなくなっていくことが原因ですので、日頃から飲水量を確保するように気を付けましょう。
このようにブタさんは水分が大事な動物なので、もし、おうちで消化器系の症状に遭遇した場合は落ち着いて原因を探り適切な対処を行っていただき、改善のない場合や急を要する場合は動物病院の受診しましょう。
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