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【獣医師監修記事】マイクロブタさんの誤食について

2022年12月07日

健康・病気

今回の記事は、「ブタさんの誤食」についてのお話です。mipig ownersのチャットでもご相談の多い内容で、時には命を落としてしまう危険性もあります。消化管閉塞を引き起こしてしまう危険性やその場合の症状・対応方法をお伝えします。誤食が起きないよう、改めてブタさんの身の回りの環境を整えるなど、対策を行っていきましょう。




誤食とは


誤食とは、『身体に有害なものを摂取してしまうこと』を言います。

身体にとって有害なものとは、

    動物にとっての毒物(薬、洗剤、農薬、毒のある植物、タバコの吸い殻など)

    消化ができず、消化管に詰まる可能性がある異物

の大きくふたつに分けられます。

ブタさんは好奇心が強く食欲も旺盛で食べられるものを常に探して生活しています。

そのためか、「異物を食べてしまったのですが、どうすれば良いですか…。」とownersチャットで度々ご相談をいただきます。

この誤食の相談のほとんどは、②の消化できない異物を誤食してしまったケースです。


 異物が消化管に詰まる(消化管閉塞)ってどのような状態?


消化管閉塞は、消化管という一方通行の1本の管に異物が入り詰まって出てこなくなった状態です。

食事によって摂取された食べ物は、口→食道→胃→小腸→大腸→という順に消化管のなかを通り、消化、吸収を受け、最後には便として肛門から排泄されます。

この1本の消化管のどこかが異物で詰まってしまうと、(一方通行の一本道が通行止めになると渋滞が起きるように)、食べたものが通過できなくなり、最後には逆流し、溢れてしまいます。

体の中を走る消化管は入り組んでおり、構造や走行も複雑で、もちろん目視をすることはできません。異物が消化管のどこに詰まっているのかを特定し、取り出すことは困難です。

消化管が詰まると機能が止まってしまい、食べ物を消化・吸収・排泄することができません。また詰まった箇所はうっ血を起こし閉塞が長時間になるとその部位は壊死してしまいます。このように、異物が消化管に詰まった状態は非常に危険な状態であることが、お分かりいただけたかと思います。


 消化管閉塞の症状はどんなもの?


消化管閉塞の症状として、一番多いのは『頻回の嘔吐』です。

消化管に詰まったものをなんとか吐き出そうと嘔吐が促されるためだと考えられます。

その他の症状としては、水を飲んだ途端に吐く(吐出)、腹囲膨満、腹痛、元気消失、食欲不振などです。

ブタさんは普段から急いで食べたりして吐き戻すこともあるので、本当に消化管閉塞なのか見極めることが難しいかもしれませんが、繰り返し吐いていたら消化管閉塞を疑った方がいい場合が多いです。

また、嘔吐が1回でも、ゴミ箱が荒らされていたり、クッションの中身がバラバラになっていたり、誤食が疑わしい場合は念のため早めに病院の受診をお願いします。

 ブタさんが誤食しやすいものは?


ドーム型クッション

カフェでの事例やオーナー様からのご相談でよく聞くのは、クッションのスポンジや綿の誤食です。

これは、ブタさんの習性である【鼻掘り】が影響していると思います。

ブタさんの馴化前の姿であるイノシシは、森林に棲み、常に食べるものを探していて、鼻で土を掘り返して食べられるものを探すこともあります。その名残でブタさんもルーティンとして【鼻掘り】をします。

毎日のように鼻でクッションを必死にこすっていて、ある日そこから噛み応えのあるスポンジや綿が出てきたら、もぐもぐと噛んでしまってつい飲み込んでしまうブタさんの気持ちもわからなくはないです。

むしろ本能のようなものなのでやめさせることは難しく、ルーティンに際して飲み込んでしまわないかオーナー様のほうで気を使ってあげることが大事です。




↑実際にブタさんが誤飲してしまったドーム型ベットの様子(オーナー提供)


定期的に使っているクッションに穴が開いていないか、こすれて生地が薄くなっていないか、ブタさんが日常的に使っているものをチェックしてあげてください。

またドーム型のクッションなど内側が見えにくいものはほつれに気付きにくく、誤食の発見が遅れる場合がありますので、ブタさんになったつもりで隅々まで気にかけるようにして下さい。

カーテンや薄手のショールなども食べてしまうこともあるので、様々な可能性を考えてブタさんにとって安全な生活スペースを確保することが大事です。

その他の誤食しやすいものとしては、小さい金属(電池、洗濯ばさみ、釘など)も冷たい触感・口触りが好きなようで、こちらもブタさんの届く範囲に落ちていないか注意が必要です。


 パターン別の誤食してしまった場合の対処法と受ける可能性のある処置は?


誤食を発見した場合の対応について、いくつかのパターンに分けて対処法を見ていきましょう。


①    少量を誤食しているようだが、いつもと変わらない、元気もある

⇒ 様子を見ても良い(誤食したものが小さいと便から出てくる可能性があります)ですが、著変があればすぐ病院を受診できる準備をしておく。


②    さっき誤食して、いま元気がない

⇒ 病院を受診する。催吐処置を受ける(誤食後すぐであれば異物はまだ胃の中にあり、吐き出させることができる可能性があります)。


③    いつ誤食したかわからないが誤食した形跡があり、ぐったりしている、何回も吐いている

⇒ 病院を受診する。閉塞している場合は全身麻酔下で内視鏡処置か開腹手術を受ける。


④    少量の誤食だが、ぐったりしている

⇒ 病院を受診する。少量でも日常的に綿などを誤食していると胃の中でひとかたまりになり詰まるケースがあります。閉塞している場合は全身麻酔下で内視鏡処置か開腹手術を受ける。



⑤   
先が鋭利なものを誤食した

⇒ 病院を受診する。吐かせると消化管に刺さる可能性があり催吐処置は受けられないため、全身麻酔下で内視鏡処置か開腹手術を受ける。



⑥   
誤食したかわからないが、何度も吐いてぐったりしている

⇒ 病院を受診する。胃腸炎か閉塞かの鑑別を受ける。


 家庭で、頻回の嘔吐や誤食が発生した場合の対処としては、基本的に病院の受診をお願いします。ぐったりしている場合は夜間でも救急で診てくれる動物病院を受診してください。

内視鏡処置や開腹手術による異物の除去は全身麻酔下で行うため、ほとんどの場合、入院となります。

また単なる胃腸炎による嘔吐でも、繰り返すと脱水になり体力も消耗しますので様子を見ず動物病院を受診することをお勧めします。


 mipig cafeでの誤食例


■当時7㎏のブタさん

朝ごはんの後、繰り返し嘔吐しそのままぐったりして立てなくなった。お腹も異様に張っていた。

その日のうちに動物病院を受診。診察・検査にて消化管閉塞が疑われたため、そのまま入院し開腹手術により閉塞物を摘出、2日後に退院した。

詰まっていたのは、クッションの綿がいくつか絡まって塊になったものでした。







嘔吐の症状の前に大量に綿を食べた痕跡はなく、小さな綿を日常的に拾って食べていたと思われます。クッションに空いた穴に気づかずそこから落ちていたようです。食べた綿が消化されず胃の中に残り、結果的に大きな塊になりさらにフードと絡まることで詰まったと考えられます。




このように 単体で便から出てきそうな小さなものでも、留まり塊になると閉塞を引き起こす可能性があるので、嘔吐し元気がない場合は動物病院の受診をお願いします。


まとめ


今回は誤食による消化管閉塞の危険性をお伝えしました。

誤食は、小さいもので便から出てくれば大きな問題はないのですが、詰まって消化管閉塞まで発展してしまったり、鋭利なものを誤食してしまうと途端に緊急性が増し、急な対処を要する事態になります。

さっきまで穏やかに過ごしていたはずなのにいきなり命に関わる窮地に立たされてしまいます。

誤食による事故は、他の疾患と異なり、未然に防ぐことが可能なものです。

相手は動物なので絶対はないのですが、ブタさんの行動を予測し先回りしてリスクを最小限にすることが重要です。

そのためにも、ブタさんに関わるご家族全員が誤食のリスクを知ることから始めてみてください。


 mipigにおいてもブタさんが安心して暮らせるような環境づくりをお手伝いできるよう、情報提供を今後も発信してまいります。




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