ブタさんの福祉について考える
2021年05月07日
コラムどうもこんにちは、mipig責任者兼ブリーダーの皆川 竜二です。
「ブタさんにとっての幸せは何か?」
と聞かれることありますが、この質問に対するシンプルな回答はありません。
私自身もよく自問自答しています。
終生飼育が幸せとも限らなければ、自然に近い環境がブタさんの健康に良いとも限りません。
「ちゃんと可愛がっている」というのもブタさんの幸せに配慮しているとは必ずしも言い切れません。
動物福祉と動物愛護
動物の幸せについての倫理を話す際には動物福祉(アニマルウェルフェア)という言葉が使われます。
「動物愛護」と似ていますが、意味合いが少々異なります。
動物を守り、動物の地位向上を求めることが動物愛護です。
それに対し、「動物福祉」は動物に対して与える痛みやストレスといった苦痛を最小限に抑えるなどの、動物の幸福を実現する考えのことを指します。
そんな動物福祉(アニマルウェルフェア)の基本とされている「5つの自由」をご紹介します。
動物の5つの自由とは
1960年代の英国で、家畜の劣悪な飼育管理を改善させ、家畜の福祉を確保させるために、その基本としてこの「5つの自由」が定められました。 現在では、家畜のみならず、ペット動物・実験動物等あらゆる人間の飼育 下にある動物の福祉の基本として世界中で認められ、EUではこれに基づい て指令が作成されています。
1.飢えと渇きからの自由
・その動物にとって適切かつ栄養的に十分な食物が与えられていますか?
・いつでもきれいな水が飲めるようになっていますか?
2.不快からの自由
・その動物にとって適切な環境下で飼育されていますか?
・その環境は清潔に維持されていますか?
・その環境に風雪雨や炎天を避けられる快適な休息場所がありますか?
・その環境に怪我をするような鋭利な突起物はないですか?
3.痛み・傷害・病気からの自由
・病気にならないように普段から健康管理・予防はしていますか?
・痛み、外傷あるいは疾病の兆候を示していませんか?
・そうであれば、その状態が、診療され、治療されていますか?
4.恐怖や抑圧からの自由
・動物は恐怖や精神的苦痛(不安)や多大なストレスがかかっている兆候を示していませんか?
・そうであれば、原因を確認し、的確な対応が取れていますか?
5.正常な行動を表現する自由
・動物が正常な行動を表現するための十分な空間・適切な環境が与えられていますか?
・動物がその習性に応じて群れあるいは単独で飼育されていますか?
・また、離すことが必要である場合には、そのように飼育されていますか?
5つの自由の認知
現在、「5つの自由」は動物福祉の基本として世界中で認められています。
英国では、動物福祉法2006の第9条「福祉を保障するための動物の責任者の義務」として同じ内容が「動物のニーズ」という形で条文に記載されています。
また、世界獣医学協会(WVA)においても基本方針の中に「5つの自由」が明記されています。
日本における動物福祉
世界的に見ても人が管理するペット動物・実験動物・家畜動物にこの「5つの自由」が与えられていないケースが非常に多いです。
中でも日本は、動物福祉が非常に遅れていると言われています。
特に家畜動物は物扱いされていることが多く、家畜動物であるブタさんの幸福を考えることもあまり一般的ではないかもしれません。
ただmipigを始めて3年目になりますが、この風向きの変化はこの短い年月でも感じ取れます。
もしかしたら遅れているのかもしれませんが、着実に前進しているように感じます。
わんちゃん・ねこちゃんにおける福祉
ペットショップのわんちゃん、ねこちゃんが清掃されていない小さなケージにずっと閉じ込められていることが、何十年前までは普通の光景でした。
私が子供の頃にあった地元のペットショップは今考えればかなり酷いものです。
そんなお店が現代にオープンすれば間違いなくバッシングを受けますし、誰もそこから飼いたいとは思いません。
わんちゃん・ねこちゃんに関しての日本の動物福祉は少しずつ良い方向に進んでいると感じています。
ブタさんにおける福祉
現在ペットショップやホームセンターなどでもブタさんが販売されていることがありますが、中には、劣悪な環境で飼育している業者もあるようです。
清掃されていない小さなケージにずっと閉じ込められているブタさんがいるという目撃情報も未だに見聞きします。
ペットとしてブタさんが認知されてきていると同時に所詮ブタだからという気持ちで、ブタさんがモノ扱いされていることに憤りを感じています。
現在ではネットの普及もあり、ブタさんを劣悪な環境で販売している業者に対して声をあげている方も多く、ブタさんが幸せである為には最低限、何が必要かを理解している人が増えているように思います。
「5つの自由」は最低限の権利
この「5つの自由」は非常に基本的な自由であり、「5つの自由」=「幸せ」という訳ではありません。
私たちはこの「5つの自由」を動物を飼育する人の最低限の義務として考えております。
ブタさんに限らず、人が管理するどんな動物にもこの「5つの自由」は与えられるべき最低限の権利です。
「フクロウカフェのフクロウは飛べずに幸せなのか」「臆病なハリネズミが常に人目に晒されて幸せなのか」など「5つの自由」を基準に、色々な動物に対して動物福祉に配慮しているかという問いかけができます。
動物福祉のために私たちができること
英語で「Vote with your wallet」という言葉があります。
これは直訳して「財布をもって投票する」という意味になりますが、要するに自分が賛同する企業の商品を積極的に購入する、または賛同しない企業の商品の購入を控える消費者行動を指します。
シンプルかつ、最も世の中を大きく動かす方法だと思っております。
自分の信念を押し付けた攻撃的なアプローチは、個人的にはあまり好きではありません。
動物実験に反対していれば、その手の商品を買わないという行動をより多くの人が取ればメーカーからすれば機会損失である為、後々動物実験を行わなくなります。
ペット業界も同様で、悪質なブリーダーや、動物福祉を配慮していないペットショップからお迎えしないことが1番の方法です。
可哀想だからという理由でそこから購入してしまっては、負の連鎖が永遠に続いてしまいます。
mipigのブタさんに関しては今のところ「ここのブタさんは不幸せそうだな」と言われたことはありませんが、「本当に幸せなのか?」と自問自答しながらもブタさんの幸せの為に試行錯誤しながら尽くしていきます。
●● mipig 責任者 皆川 竜二
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